◆高い税に見合う施策

 6月中旬、フィンランドの首都、ヘルシンキ市中心部にあるリンヤ公園。パークハウスと呼ばれる建物の中で、幼児から10代半ばまでの子ども約50人がテーブルで絵を描いたり、走ったりして遊んでいました。

 同国ではこの時期、学校の夏休みの期間中。公園は日本の学童保育に当たり、保護者が働きに行っている子が「通園」します。

 大柄の職員ディミトリ・グロンフォルスさん(32)は勤務して8年。「子どもの成長のためにとても大切な場所です。私はこの仕事が大好き」と目を輝かせます。グロンフォルスさんの身分は、公園で働く市の職員です。

 公園は広さ約8,800㎡。周囲は低いフェンスで囲まれています。開園時間は午前9時から午後4時。このような施設が市内に65カ所あります。だれでも通うことができ、保育料は無料です。

 子どもたちが建物内で過ごしているのは、冷たい雨が降っているからです。晴れていると、グラウンドでサッカーをしたり、ブランコをしたりして体を動かします。路面電車やバスの乗り方を学ぶツアーや、野鳥を観察するイベントなども企画されています。

 昼ごろ、子どもたちと職員が一斉に歌いだしました。この歌が昼食の時間が始まる合図です。この日の献立は、ひき肉とジャガイモのスープ。子どもたちは、自宅から持ってきた器にスープをついでもらい、夢中になって食べ始めました。この給食も無料です。

 建物内にはいい匂いが漂い、おなかが鳴りそうです。そんな気持ちを察してか、「ごめんなさい。皆さんには差し上げられないんです」。取材している私たちに、職員が申し訳なさそうな顔で謝りました。給食を食べられるのは子どもだけ。職員も自分の昼食を持参します。食材費や人件費は税金で賄っているため、厳しく枠をはめているのです。

 フィンランドでは小学校から大学まで学費は無料。18歳未満の医療費も無料。出産時には、洋服や布団など約50点が入った育児パッケージを、国が希望する子全員にプレゼントします。

 お金が必要なのは保育園だけ。ただ、両親の所得に応じて負担ゼロから最大でも290ユーロ(約3万3,000円)にすぎません。その分、日本の消費税に当たる付加価値税は24%と3倍になっています。

 育児休暇を取得し6カ月の娘の子育てをしている会社員アレクシ・リンタ・カウッピラさん(31)は「子どもが生まれたことで、今まで高い税金を払ってきたのが良かったと思う。これだけ子育て環境に恵まれているのだから」と話します。

 東洋大の藪長千乃教授(福祉政策)は「フィンランドでは政府に対する信頼が厚い。高い税金を払っても、それに見合ったサービスをきちんと提供してくれるとの理解があり制度が成り立っている」と指摘します。

 

◆日本の教育費は800万~2,300万円

 文部科学省と日本学生支援機構の調査では、日本の教育費は、幼稚園から大学まですべて公立でも約800万円。すべて私立に通うと2,300万円に達します。

 特に大学の学費が高く、国立だと4年間で260万円、私立では540万円。下宿すればさらに仕送りなどもかかります。保育料は、自治体の独自補助を別にすれば、毎月の個人負担は家庭の所得により0~10万4,000円(3歳未満)。

 経済協力開発機構(OECD)の調査によると、2012年の日本の国内総生産(GDP)に占める教育機関への公的支出の割合は、比較可能な32カ国中で最下位の3.5%。フィンランドは4位で5.7%でした。